エスプレッソの液面に浮かぶ、美しい黄金色の泡「クレマ」。
カフェで提供されるような完璧な一杯を自宅でも再現したいと願いつつ、抽出に苦戦している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、SCAJ認定コーヒーマイスターの視点から、クレマのメカニズムや美しく抽出するための必須条件を詳しく解説します。
美味しいエスプレッソは、毎日のリラックスタイムをより豊かにしてくれるはずです。
Joeエスプレッソのバロメータ!
- クレマの正体と、美味しさを左右する重要な役割
- エスプレッソのクレマが出ない(できない)4つの原因
- 自宅の環境で分厚いクレマを作るための理想的な条件
- 直火式や手動式でもクレマが作れるおすすめの最新器具
Joe/SCAJ認定コーヒーマイスター


エスプレッソの「クレマ」とは?至高の一杯を決める“黄金の泡”


美味しいエスプレッソを語るうえで、クレマの存在は決して欠かせません。
ここでは、この美しい泡が持つ役割と、カップの中で形成される層の秘密について紐解いていきます。
クレマの正体と、エスプレッソにおける重要な役割
クレマ(Crema)とは、エスプレッソを抽出した際に液面のトップに浮かぶ、きめ細やかなヘーゼルナッツ色の泡を指します。
この泡の正体は、コーヒー豆に元々含まれている二酸化炭素(炭酸ガス)です。
高圧の状態で一気に抽出されることで、お湯に溶け込んでいたガスが細かい気泡となって液面に浮上します。
クレマは単なる見た目の美しさだけでなく、エスプレッソの芳醇な「香り」をカップの中に閉じ込めるフタのような役割を果たしています。
口当たりをまろやかにし、苦味の角を和らげる効果も期待できるのです。


完璧なエスプレッソを構成する3層(クレマ・ボディ・ハート)
理想的なエスプレッソは、グラスに注ぐと美しい3つの層に分かれます。
- クレマ(上層):アロマを閉じ込める黄金色の細かい泡
- ボディ(中層):コーヒーのコクと甘みを感じるキャラメル色の液体
- ハート(下層):濃厚でパンチのある深いダークブラウンの液体
この層がはっきりと分かれている状態こそが、抽出が成功した証拠と言えます。
時間が経つと3層は徐々に混ざり合ってしまうため、抽出直後の数十秒間だけ楽しめる特別な芸術品と言えるでしょう。
それぞれの層が持つ風味のコントラストを味わうのが、エスプレッソの醍醐味です。



抽出後は必ず確認すべし!
なぜ?エスプレッソのクレマができない(出ない)4つの原因


「自宅のマシンで淹れても、表面に薄い泡しか浮かない」と悩む方は少なくありません。
クレマが綺麗に出ない背景には、主に4つの決定的な原因が隠れています。
原因1. コーヒー豆の鮮度が落ちてガスが抜けている
クレマの元となるのは、焙煎時に豆の内部へ発生する炭酸ガスです。
そのため、焙煎から時間が経ちすぎてガスが抜けきってしまった古いコーヒー豆を使用すると、どれほど高価なマシンを使っても豊かなクレマは発生しません。
スーパーなどで販売されている大量生産品の豆は、手元に届くまでに時間が経過しているケースが多く、泡立ちが悪くなる傾向にあります。
豊かな泡を求めるなら、新鮮な豆の選択が必要不可欠です。
原因2. 豆の挽き目が粗く、圧力がかかっていない
エスプレッソの抽出には、お湯が粉の層を通過する際の「抵抗」が非常に重要となります。
コーヒー豆の挽き目が粗すぎると、お湯が粉の隙間をスッと素早く通り抜けてしまい、十分な圧力がかかりません。
その結果、ガスが十分に溶け出さず、シャバシャバとした薄い液体になってしまいます。
クレマを生み出すためには、パウダー状の「極細挽き」に対応した専用のグラインダーを使用することが求められます。
原因3. 抽出時の温度やマシンの圧力が不足している
美しい泡を生み出すには、およそ9気圧という強い圧力と、約90度前後の適切なお湯の温度が必要です。
家庭用の安価なエスプレッソメーカーの中には、カタログスペックで高気圧を謳っていても、実際にポルタフィルター(粉を入れる部品)へ均一な圧力をかけられない機種が存在します。
また、抽出前にお湯の温度が十分に上がりきっていない場合も、成分とガスがうまく抽出されず、白っぽく薄いクレマになってしまうでしょう。
原因4. タンピング(粉を押し固める力)が弱い・均一でない
極細に挽いたコーヒー粉をフィルターに詰め、専用の器具(タンパー)で押し固める作業を「タンピング」と呼びます。
この押し固める力が弱かったり、水平でなく斜めに固まってしまったりすると、お湯が抵抗の少ない部分(通りやすい道)だけを抜けてしまう「チャネリング」という現象が起きます。
これにより抽出が不均一になり、豊かなクレマが形成されません。
正しいフォームで均一に圧をかける技術が求められます。
自宅で分厚いクレマを作る!プロが教える理想の作り方と条件


原因を理解したところで、次は具体的な「作り方」に焦点を当てましょう。
自宅のカフェスペースで、専門店レベルの濃厚なクレマを引き出すための条件を解説します。
条件1. 焙煎から1〜2週間の新鮮なコーヒー豆を選ぶ
クレマを分厚く抽出するための絶対条件は、鮮度の高いコーヒー豆を用意することです。
焙煎直後の豆はガスが多すぎて抽出が不安定になるため、焙煎日からおよそ1週間〜2週間ほど経過したタイミング(エイジング後)がベストと言えます。
お気に入りのロースターやスペシャルティコーヒーのオンラインショップで、焙煎日が明記されているものを注文してみてください。
発送のタイミングで新鮮な状態を届けてくれるお店を選ぶのがコツです。
条件2. 高性能グラインダーで均一な「極細挽き」にする
豆のポテンシャルを最大限に引き出すためには、グラインダー(ミル)への投資を惜しまないでください。
エスプレッソ用の極細挽きは、微粉のサイズが均一であることが非常に重要です。
粒度がバラバラだと、抽出のムラに直結します。
手動・電動を問わず、エスプレッソ挽き(細挽き〜極細挽き)の細かい調整が無段階でできる精度の高いグラインダーを使用することが、美しい抽出への最短ルートとなります。
条件3. 本格的なエスプレッソマシン(メーカー)で9気圧をかける
豆の準備が整ったら、9気圧という理想的な圧力を安定してかけられる本格的なエスプレッソマシンを使用しましょう。
抽出時間は、約20〜30秒間で約30mlの液体を落とすのがセオリーです。
マシンの電源を入れてからポルタフィルターまでしっかりと温め(予熱)、適切な温度で抽出を開始してください。
これにより、黄金色で厚みのある、ベルベットのような滑らかなクレマがカップの表面を覆いつくします。
【裏技】ロブスタ種をブレンドしてクレマが多い状態を作る
どうしてもクレマのボリュームが出ない場合の裏技として、アラビカ種の豆に「ロブスタ種(カネフォラ種)」をブレンドする方法があります。
ロブスタ種はアラビカ種に比べて炭酸ガスを多く含む特性があり、少量ブレンドするだけでクレマの厚みと安定感が劇的に向上するのです。
本場イタリアのバール(カフェ)でも、あえてロブスタ種を10〜20%ほど配合したブレンドが好んで使用されています。
手動・直火式(マキネッタ)でクレマは作れる?


大型のマシンを持っていなくても、キャンプや自宅のキッチンでエスプレッソ風のコーヒーを楽しめるのが直火式や手動式の器具です。
しかし、クレマを作るとなると少し事情が変わってきます。



ひと工夫必要!
通常のマキネッタだとクレマが少ない・できない理由
イタリアの家庭に必ず1つはあると言われる直火式エスプレッソメーカー「マキネッタ」。
非常に手軽で美味しいコーヒーが淹れられますが、一般的なマキネッタでは分厚いクレマはできません。
理由は「圧力の不足」です。
マキネッタは沸騰したお湯の蒸気圧を利用しますが、かかる圧力はせいぜい1.5〜2気圧程度。
クレマ発生に必要な9気圧には遠く及ばないため、表面にうっすらと泡が浮かぶ程度に留まってしまいます。
直火式・手動式でクレマが出せる!おすすめの器具
通常はクレマができない直火式や電源不要の手動式でも、特殊な機構によって高圧抽出を実現した素晴らしいメーカーが存在します。
おうちカフェを格上げするおすすめの3機種を紹介しましょう。


Bialetti(ビアレッティ)ブリッカ


マキネッタの老舗・ビアレッティ社が開発した、特殊な圧力バルブを搭載した直火式モデルです。
抽出の最後にポンッ!という音とともに一気に圧力をかけることで、直火式でありながらエスプレッソのようなクレマを作り出すことができます。
アウトドアでも活躍する人気商品です。
Flair Espresso(フレアエスプレッソ)


電源を一切使用せず、テコの原理を利用して手動で9気圧をかけることができる革命的なエスプレッソメーカーです。
最高峰のモデル「Flair 58」などは、プロのバリスタも驚くほどの完璧なクレマと味わいを実現します。
本格的な風味を追求したい方に最適の選択肢です。
WACACO(ワカコ)Nanopresso


携帯性に特化したコンパクトな手動ポンプ式エスプレッソマシンです。
手のひらサイズの本体ながら、内蔵されたポンプを繰り返しプッシュすることで最大18気圧という驚異的な圧力を生み出します。
電源不要でどこでも濃厚なクレマを楽しめるため、旅行先への持ち運びにも便利です。
エスプレッソのクレマに関するよくある質問(FAQ)
最後に、読者の皆様からいただくメッセージやメールでも質問が多い、クレマに関する疑問にお答えします。
抽出したクレマの色が黒っぽかったり、白っぽかったりするのはなぜ?
クレマの色は、抽出の良し悪しを見極めるバロメーターです。
色が白っぽく薄い場合は、抽出温度が低すぎる、挽き目が粗すぎる、またはタンピングが弱い「過小抽出」のサイン。
逆に色が濃い焦げ茶や黒っぽく、真ん中に白い斑点(ホワイトスポット)が出ている場合は、挽き目が細かすぎるなどの「過抽出」になっています。
美しいヘーゼルナッツ色を目指しましょう。
クレマが多い豆と少ない豆の違いは何ですか?
先述したロブスタ種の有無に加えて、焙煎度合いも大きく影響します。
一般的に、深煎り(フレンチローストなど)の豆の方が細胞組織が脆くなっており、ガスが放出しやすいためクレマが出やすくなります。
浅煎りの豆は組織が硬くガスが抜けにくいため、クレマの量は控えめになる傾向があります。
豆の特性に合わせて抽出のアプローチを変えることが必要です。
全自動エスプレッソマシンでも手動のように綺麗なクレマは作れますか?
はい、最新の全自動マシンであれば十分に綺麗なクレマを楽しむことができます。
全自動マシンは、豆の計量から挽き、タンピング、抽出までを最適な条件でコントロールしてくれるため、初心者でも失敗しにくいのがメリットです。
ただし、ミルクを合わせたラテアートなどを本格的に極めたい場合は、微調整が効くセミオート(手動)マシンの導入をおすすめします。
まとめ:クレマの抽出条件を極めて、極上のおうちカフェを楽しもう
エスプレッソの象徴とも言える「クレマ」は、新鮮なコーヒー豆、適切な極細の挽き目、そして9気圧という抽出条件が完璧に揃った時にのみ姿を現す黄金の泡です。
もし今、ご自宅でクレマがうまくできないと悩んでいる場合は、まずは「焙煎したての新鮮な豆」へ変更してみることから始めてみてください。
豆の種類や機材の調整を少しずつ試しながら、自分だけの至高の一杯を探求する時間は、何にも代えがたい贅沢な体験となります。
ぜひ本記事で紹介した方法やおすすめの器具を参考に、奥深いエスプレッソの世界を存分に楽しんでくださいね。


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